子どもはキウイフルーツのアレルギーがあり、交差抗原性のあるラテックスに対しても接触性の皮膚炎を起こします。
歯医者に行っても耳鼻科に行っても通院先が変わるたびに、ラテックスの説明は欠かせません。
治療中に医師が使う手袋の接触で皮膚炎を起こしてしまう危険があるため、治療前に「ラテックスの手袋は使わないでください」と伝えなければならないのです。
以前は丁寧にお話ししてようやく理解してもらう感じでしたが、最近は説明を始めると「ラテックス対策が必要な患者さんですね」と言って「ラテックス対策のセットと切り替えて」と周りのスタッフにも声をかけて安全な状態にしてくださる病院が増えたと思います。
それでも高校生の頃に、通院1回目の時に説明してきちんと対処してくれたので2回目は大丈夫だと思って説明しなかったら、医師がそのことを忘れてラテックス手袋を使ってしまい、治療の途中で気づくという出来事がありました。
その時は鼻の下から口の周りにかけてちょっと赤くなっただけで済んだのですが、翌日からその部分が腫れて浸出液が出てきて、さらにその翌日にはそれが固まり数日後にはカサ蓋ができました。
学校は休みたくない、病院には行きたくない、難しい年頃の子どもに「どうしたい?」と聞くと「いろんな塗り薬を使った経験があるけれどどれも一長一短あるから、自分としては自然治癒一本勝負でやってみたい」と言います。
最初の頃は口を動かすとカサ蓋が割れて痛いので動かすこともできず、食事はスプーンの上にちょっとだけ食べ物を載せて、長い時間かけて食べきるような状態でしたが、少しずつ回復して固くなったカサ蓋も取れてひどい状態をやり過ごすことができました。
でもそこからがとても長くて出口のないような時間がかかりました。
子どもはどんどん不機嫌になり皮膚のことも学校のことも話さなくなりました。
皮膚の回復はとてもゆっくりで1年近くは憂鬱な日々を過ごしていたと思います。
「最近はいい調子になってきたね」と話せるようになった頃、子どもが「実はね・・・」と言って話したことは衝撃的でした。
クラスの中で「気持ち悪い」「そばに寄るな」「マスクで顔を隠せ」と毎日のように言う一群の人たちがいて、そのことを親に話すと心が折れそうだったから話せなかったというのです。
「自然治癒力一本勝負」と威勢がよく「乾かす」ことにこだわり「マスクをすると痛いから使わない」と周りに説明している様子に、「頑張れ、頑張れ」と治すことだけ考えてエールを送っていたけれど、本人はもっと別のつらい出来事にも向き合っていたのだと思うと、胸が張り裂けそうでした。
「でもさ、問題の発端はラテックス対策するの忘れちゃだめだよってことだよね」と、子どもは笑って言いました。
「ごめんね。あの時気づかなくて」その笑い顔を思い出す度、今も反省しています。