サブタイトル

卵アレルギーとストロフルスのこと

夏に悩まされたのはストロフルスでした。

卵がアレルゲンとなって強くアレルギー症状を起こしていた頃は、ストロフルスの症状も重く、蚊に1か所刺されただけでもその1カ所が大人の手のひら大に大きく腫れて熱をもっていつまでもかゆく、ひと夏に毎年20カ所くらいの虫刺されができて、かゆくて浸出液が出て、薬をぬったり抗アレルギー剤を飲んだり、やっと落ち着いたころに書き壊してまた傷が腫れあがりというようなことと戦っていました。

アトピー性皮膚炎とストロフルスは微妙に経過が違うので、両方が悪化したときなどは終わりのない苦しみのように感じていました。

蚊取り線香を焚ければそういった問題は起こらなかったのかもしれませんが、子どもは喘息があり、蚊取り線香を焚くと夜中にゼイゼイと息が苦しくなることが度々あり、蚊取り線香も液体蚊取りも使わず、虫を遠ざけると聞いた「かみつれ草」を植木鉢に植えて、玄関や窓のあたりに置いたりしていました。

くつや靴下に虫よけのシールを貼ったり、ハッカ水をスプレーしたり、あの手この手の工夫をしてママ友と情報交換をしてその他にもいいという噂のものに飛びついたりもしましたが、どれも成果が上がったかどうか不確かでした。

そんなことを何年か続けているうちに、卵に対するアレルギーで呼吸困難を起こしたり手足のあちこちに出る皮膚症状があまりひどくならなくなり、間違って少量のアレルゲンを口にしてしまっても何も症状が出ない経験が何回かあり、乳成分や小麦はまだだめだけれど卵は落ち着いてきたと感じる場面が増えました。

ストロフルスもひどい時もあるけれど、小さな腫れで済んだり、浸出液に悩まされなくなったりして「今年の夏はいい感じだね」などと子どもといっしょに手足を観察する余裕が出てきました。

虫刺されでストロフルスがおこり大変だったころは、家族の意見が分かれてそれも悩みの種になっていました。

私たちの団体は野外体験プログラムを長年実施してきたこともあり、わが子も一緒に環境教育プログラムキャンプに連れて行っていました。

私自身は「子ども時代はあっという間に過ぎてしまうから、今体験できる時を大切にしたい」と考えていました。

沢のプログラムの時間は地面よりも冷たい空気が流れ、意外なことにやぶ蚊はほとんどいません。

テントサイトにも藪がないところを使っていたので、自宅の庭先よりも蚊が少ない印象でした。

「症状が出てもケアをしっかりやって貴重な体験をさせたい」という思いが勝っていました。

しかし家族は、テントサイトや沢のプログラムのことは知りませんから「わざわざ大変な場所に行く」としか思えなかったようでした。

家族の中には「子どもがかわいそう」という意見もあって、「子ども時代の貴重な体験」という意見と「病気の子なんだから我慢させた方がいい」という意見のせめぎあいが続きました。

私自身にもストロフルスがあり、子どもと二人で「ちっとも治らない」という文句をいうときも小さな声でひそひそ言いあうような状況でした。

夏は心身ともに辛かったのですが、今になってみると意見の違いがあってたくさんの話し合いがあったことは子どもにとって悪くはなかったと感じるようになりました。

子どもは大人の意見の違いに聞き耳を立てて、だんだんと自分で考えるようになり、自分で判断し行動できるようになったからです。

幸か不幸かそんな風に行動できるようになった頃にはストロフルスに悩まされることはほとんどなくなり、大変な夏は去っていきました。