「動物を飼うようになったら子どものアトピーがひどくなった」という相談を受けました。
このテーマは繰り返し質問され、答えるまでもないほど結論は明らかなのになかなか解決しません。
動物を飼うことによって得られる「子どもの心の成長に及ぼす良い影響」はたくさんあります。
動物の種類が何であれ、ひとたび飼い始めると動物は人の心を虜にしてしまいます。
アトピー性皮膚炎や喘息の悪化は、その動物と病気を(あるいは子どもを)天秤にかけて「飼うべきか、手放すべきか」の判断を迫られることがあります。
ハムスターを飼って数週間後に5歳の子どもの喘息が重篤化して入院することになった人の場合は、「子どもが退院した時に戻る部屋には動物の毛やフケなどのあらゆる痕跡が残っていないように徹底的に掃除をしないとまた再発する可能性があります」と伝えると、「看護師さんにも同じことを言われた」と言って、ハムスターとハムスターがいたケージや専用のおもちゃを友人に譲り、夫婦で家の中を大掃除して子どもの退院に備えてくれました。
結論はとても良いものでしたが、数年後に移動動物園で動物と触れ合い、重い喘息が出たという相談を同じ人から受けたので、お子さんの症状悪化の引き金となるものはやはり動物のフケやフンなどと関りがあったのだろうと思います。
別の事例では、数年間外で飼っていた犬を、近隣からの苦情を受けて家の中で飼うようになったら、子どものアトピー性皮膚炎が悪化して「何かいい対策はないですか」と相談された人がいました。
動物を飼う選択もあるけれどあきらめる選択もあることをたくさん話し合いましたが、何週間も相談の電話をかけてくださり、堂々巡りの話し合いになってしまうので、「そろそろ結論をだすためにお子さんと直接この問題を話し合うべきなのではありませんか」と促す結果になりました。
子どもさんは当時中学2年生でした。
手足が包帯だらけになり顔や首周りにも症状が広がってきて、もはや誰の目から見ても症状が悪化の一途をたどっていることがわかりました。
家族の話し合いの最中にお母さんが「犬は家族と同じくらい大切」と言って泣き出したとき「お母さんはそう言って僕じゃなくて犬を選んだんだ」と子どもさんがつぶやいたことがきっかけで、ようやく犬の行く末が決まりました。
お母さんにとっては「子どもか動物か」という二者択一のことではなく、きっと動物が心の隙間を埋めてくれていたのではないかと思います。
でも当事者の息子さんにとっては二者択一にしか見えないこと、そのことに傷ついていることに遅ればせながら気づかれたのだと思います。
幸い犬の譲渡会を紹介されて引き取り手が見つかり、家の中の動物の痕跡をなくしたことで子どもさんの状態はかなり改善されましたが、悪化する前の「ちょっとアトピーっぽい状態」に戻るまで1年以上の時間が必要でした。
皮膚が悪化するときはあっという間なのに、よくなるまでの時間はとても長くかかるのだということにまた気づくことになってしまいました。