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アトピー性皮膚炎は遺伝するのかな

前回お話しした大学生のお話しです。

大学を卒業したらすぐに結婚したいと考え始めたら、自分のアトピー性皮膚炎が遺伝によるものではないか、子どもが生まれたらその子にも遺伝してしまうのではないかと気になりだしたのです。

「卒業したら就職が先でしょう」
とツッコミたくなるところ、それを聞いたお母さんは「遺伝を気にする息子の気持ち」にショックを受けたようでした。

そもそものことを言えば、
「アレルギー体質は遺伝します」「アトピックスキンに代表されるような皮膚の形質は遺伝します」
しかし皮膚炎は遺伝しません。

アトピー性皮膚炎はアレルギーがベースになって発症することもありますが、アレルギーの仕組みを介さず発症することもあるので、すっきり簡単には説明できません。

でも皮膚炎が遺伝しないことは頭の隅に残しておいてほしいと思います。

お父さんとお母さんの遺伝的傾向を受け継ぐのは全ての人にとって同じように起こる出来事です。

両親のどちらかにアレルギー体質の人がいれば、何割かはアレルギー体質を受け継ぎます。

カサカサ肌で皮膚の脂質がもともと少ない傾向にある肌質、手足が毛深い、毛穴が多い・少ないといった形質は、遺伝的傾向もあるし、21世紀の日本、寒い地域・暖かい地域といった環境や生まれた時期の影響を受けるかもしれません。

そうした生まれ持った身体の状態があったとしても、皮膚の炎症は起こることもあれば起こらないこともあるのです。

そして仮に何らかの理由で皮膚炎が起こったとしても、皮膚の脂質をよい状態に保つためにスキンケアをしたり、炎症が起こらないように皮膚を清潔にしたり、無用な刺激を与えないように肌に直接触れる衣類を意識して選択したり、皮膚の代謝が良くなるようにビタミンB群やD群を意識して摂取したり、皮膚の状態の善し悪しに影響を与える「腸内環境」を意識した食事をするなど、さまざまな事柄によって、皮膚の炎症をコントロールすることは可能なのです。

日本人の3人に1人が何らかのアレルギー疾患があるという調査結果が総務省の統計情報部から最初に出されたのは1993年のことでした。

ある大学の学生の95%が花粉症のアレルギー抗体を持っていたというデータも何年か前に発表されました。

そんな状況にある日本で生まれたのですから、アレルギー体質があってアトピックスキンを遺伝的に受け継いだとしても、とびぬけて珍しい出来事ではないことに私たちは気づかねばなりません。

アレルギー体質を受け継いだ人と受け継いでいない人が結婚しても、アレルギー体質の子が生まれる割合が高いこと。

もはやアレルギー体質を受け継いでいない人の割合の方が少ない可能性が高いこと。

これは疫学ではなく統計上の割合ですが現実を否定するわけにもいきません。

自然環境の中で生き物たちが受け継いできた命は、生きる環境の中で必要な形質が受け継がれてきました。

21世紀の日本の今を生きる子どもたちに受け継がれている体質は、生き延びるために必要なものとして必然的に選択されたものなのかもしれません。

かゆかったり、息苦しかったりこんなつらいアレルギー疾患がある身体とつきあうのはとても大変です。

でもこの身体を悲観しないで。

自分の体質が子どもにも受け継がれ同じ疾患に向き合わねばならなくなったとき、親となった自分自身に疾患があることが、子どもを理解する手立てのひとつになることを知っていてほしいと思います。