「皮膚科に行ったら食べ物のことばかり言われてなんとなく腹が立ってしまった」
指先と目の周りや首、肌着の当たる場所などにアトピー性皮膚炎があるという40代の女性から電話がありました。
よくなったり悪くなったりを長年繰り返していたけれど、ここ数年は病院に行くほどではなかった。
最近いつもよりひどくなったと感じて皮膚科を受診した。そんな経過を話してくれました。
今まで通院したことのない病院へ行ったら「甘いものや脂っこいものを食べると痒みにつながるので、食生活を変えなさい」「便秘を治すと皮膚の状態が良くなるから食物繊維の多いものを食べなさい」などとたくさんの食生活の注意を言われた後に、お風呂上りに保湿しなさいと言われたそうです。
甘いものは腸内細菌叢(腸内フローラ)のバランスを崩す引き金になることが分かっています。
油脂は消化吸収の過程で分解生成されたものの一部が化学伝達物質になります。これはアレルギーの正体と言われる「抗原抗体反応」に大きく関わるものです。
アレルギー体質の人にとって油脂のとりかたに注意が必要だということは以前から知られていますが、それを重要視する専門家もいれば、あまり口にしない人もいます。
腸内細菌叢の状態が悪いと便秘になるというのは、様々なサプリメントの説明書などにもそのメカニズムが詳しく書かれていたりして、よく知られていることだと思います。
ですから、この皮膚科のお医者さんが言っていることには根拠があり、間違ったことをこの女性に言っているようには思えませんでした。
でも「皮膚科に行ったら塗り薬をもらって、それが皮膚の状態に適していればすぐ治る」というイメージを持っている人にとっては、皮膚の治療に行ったのに自分の嗜好や食生活、さらには便通のことまで言われたくないと思ったのかもしれません。
医師の言葉の根拠はこういうことだったのではないかと、この女性に説明すると「ほぼ毎日菓子パンが主食になっている」「勤め先では忙しくてお昼を抜くことが多く、そういう時はプリンやゼリーを食べて済ませてしまう」「たまに飲み会があると揚げ物、焼き肉などをドカ食いしてしまうことがある」「自分はいくら食べても太らないし、むしろ痩せ気味だと感じている」といったご自身の状態を話してくれました。
そして最近頑固な便秘と体の冷えで悩んでいると打ち明けてくれました。
アトピー性皮膚炎で悩んでいる人がみんな、食べ物を変えたら治るわけではないと思います。
もちろんスキンケアや処方された薬を使うことも大事です。
でも、甘いものをたくさん食べていた人が量を大幅に抑えたり、油っぽいものばかり食べていた人が野菜中心のバランスのとれた食生活ができるようになると、「以前よりもいい状態になった」と電話してくださることがあるのも事実です。
電話の女性は「図星のことを言われたから腹が立ったのかな?」と笑って電話を切りました。
その後また電話くださるといいなと思っています。